会場には開演20分前に着きました。初めての陳昇のコンサート・・・一人で1階3列目の、ど真ん中に座りながらドキドキ・・・スクリーンに映る、陳昇の詩と写真のコラボレーションを見ながら、ひたすらドキドキと・・・開演を待っていました。なんて、彼らしい、いい写真なんだろう、詩も、とても彼らしい。控えめに流れる環境音楽風の音と相まって、コンサートのイントロ、彼の世界に浸るためのイントロとして、ふさわしい雰囲気を醸し出しています。(このスクリーンを使った演出は、全体に使われていました。)
1ベルから10分後、陳昇登場・・・歌っている、その肉声が聞こえるくらいの間近な距離に、彼が立っています。思っていたより痩せてるなぁ、それに背もこんなに高いんだ・・・生で聞くと、CDよりもずっと歌がうまいんだな・・・へぇ、こんな表情で歌うのかぁ・・・ふぅ〜ん、YOKOさんが言った通り、生陳昇格好いいじゃん・・・こりゃぁ・・・惚れるのも無理ないわぁ・・・
席が良かったため、この日はじっくりと観察して、生陳昇の格好良さを堪能しました(笑)。
正直、曲名などは、何曲かしか覚えていません。それも、好きな曲を歌ってくれた、その嬉しさで覚えているにすぎません。
それよりも、メロディーしか覚えていない、今まで、あまり気にも止めていなかったような曲が、ライブの迫力と共に、立体感を持って心に響いてきました。「なんて・・・いい曲ばかりなんだ・・・」 陳昇のメロディーメーカーとしての才能を、思い知らされた一夜でした。
1部はスロー・テンポとミディアム・テンポのナンバーを織り交ぜながら進み中盤から、アップ・テンポのナンバーへ。いい感じにロックしているナンバーが続きます・・・恨情歌・鏡子・旅程・生命的滋味・20歳的眼涙・流星小夜曲・マッシュルーム等々・・・約1時間半後に1部の終了。
2部は15分の休憩後に開始し、またスクリーンを使ったコラボレーションの後、新寶島康樂隊から阿VONの登場・・・そして、カンカン(と、みんなが呼んでいた芸人さん?)登場。コンサート1日目の伍佰登場をパロって、伍佰の物まねで一曲歌い、会場を大いにわかせてくれました。他にも・・・金門??のまねとかいろいろ。後で陳昇が、「おい、一曲やってみろと言ったけど、そんなに何曲もやって良いなんて言ってないぞぉ・・・」と、冗談で諫めたり・・・でも、カンカンのコーナーで、バックバンドが一時的に替わって、恨情歌はお休みできたので、実際は良かったのでしょう。
その後、女性ゲストとして劉佳慧が登場。ほぼ背中丸出しのキャミソールとピタッとした革パンツ姿の彼女は、その色っぽい背中で観客を悩殺・・・何曲か歌い、下がっていきました。そしてゲストコーナーは、「歓聚歌」で、幕を閉じました。
そして、第三部・・・全体にスローな曲が中心で、内省的な曲が多かった様に思います。盛り上がった人々の心を、徐々にクールダウンさせる、「聴かせる曲」の多いパートでした。
ここで・・・Vivienさんが、陳昇に教えたエピソードを元にして作った曲が披露されて・・・実はこの時、私はVivienさんの本名を知らなかったので、「僕の日本人の友人がね・・・」と、陳昇がその曲を作るきっかけを話し出した時、それがVivienさんの事とは夢にも思わず・・・翌日、皆が「Vivienさんに、すごい事が起こったらしい」と騒いでいるのを聞いて、「えっ!そうだったの?あれは、Vivienさんの事だったんだぁ・・・」と、びっくりしたんです。この話は、コンサートの間中MCとして話されていて、Vivienさん『元祖日本人の陳昇迷』の面目躍如、と言ったところでしょうか。
この曲のタイトルは「思念人の屋」。そう、コンサートタイトル曲です。
この日のコンサートは、12時半頃まで続き、最後に陳昇が「ほら、もうやる曲無いよ・・・」と、曲リストを見せながら、観客を納得させるように言ったのが、印象的でした。あんなに分厚い曲リストを、全部演奏するなんて・・・彼のコンサートって、なんて凄いんだろう・・・そう思いました。
結局、アンコールで一曲歌って、12時45分頃コンサートは終わりました。
この日思ったこと・・・本当に、生の陳昇は格好いい。いい男だった。それに、今までCDで聞いていた時に、軽く聞き流していた曲達の魅力に気が付けた事、それが嬉しい。やっぱり、音楽は生で聴かないと分からないものだな、そう思いました。特に「鏡子」、あの議論に関わっていながら、実は特に好きな曲ではなかったんです。でも、ライブで聞く「鏡子」は・・・もの凄くいい曲で・・・やっとこの曲の、本当の魅力に気付くことが出来ました。
この日は、私にとっての、初めての生陳昇。「恨情歌」で、初めて彼の歌を聴いてから5年経って、やっと聞くことが出来たライヴ・コンサート。これ以上ないくらいに幸せな時間でした。