1999年8月 陳昇コンサートin水里

 

水里のコンサート会場へ向かう途中、さっきまで晴れていたのにすごい雨が降ってきた。山の天気は変わりやすい。こんなどしゃぶりでは、コンサートはできそうにないけど...。止むかな?

 

「ね、もし雨が降ってたら、コンサートどうなるの?」同行の友人に尋ねてみる。

「うーん、聞いた話だと雨天決行だって」

 

そうかぁ、雨天決行か、よかった!.....あ、でも傘持って来てない。慌ててコンビニによってもらって、毎度おなじみ黄色の雨合羽を購入する。これで、もし雨が降ってても一応大丈夫だろう。

 

夕方会場に着いた。ほんとに山の中だ。工場跡地のような廃屋に車を停める。雨はだいぶ小降りになってきた。こんな山の一体どこでコンサートができるんだろうか、案内に従って歩いていくと、駅があった。

 

今回のコンサートは集集線の駅のイベントの一環だということは知っていた。しかしその駅は前の週の豪雨による土砂崩れで、今は列車が来ていないらしい。ホームに一つだけ客車が停まっていた。

 ここが会場

終点駅だから、レールが何本も熊手のように広がっている、その一番広がって開けたところに、ステージがしつらえてあった。ステージの向こうは深い山。客席は・・・中央にパイプ椅子が30脚ばかりあるほかはただレールがあるのみ。到着したときは、台上で音響チェックなどが行われていた。お客もだんだんあつまってきてはいるけど、まだまだ、のんびりした雰囲気。

 やまあいのステージ

とりあえず、まず場所の確保をしなくちゃ。ステージ近くにいくと、何人も知った顔に出会う。(わたしも陳昇のコンサートはこれで3回目だから、会ったことのある人達が増えてきた。)

「ハーイ!YOKO」声を掛けられる。「きゃー。ひさしぶり〜」などと挨拶する。ぬれた地面に座るためのダンボールがまわってくる。お菓子がまわってくる。写真を撮る。開演前の楽しいひととき。

 

リハーサルが始まった。今回のゲストは「Y.I.A.O」。今年ロックレコードからデビューしたての若いお兄ちゃん3人チーム。「あれ誰??」「アイアオだって..」周りの人が話しているのが「アイウエオ」に聞こえて、何でここでいきなり日本語の勉強やってるんだろ?なんてばかなこと考えたりしてました。

「Y.I.A.O」は「責任」を歌っている。リハーサルは「恨情歌(陳昇のバックバンド)」のべーシストの家駒が仕切ってるようだ。彼は見るたびにかっこ良くなってる気がする。阿VONが出て来て、リッチーレンの「心情車站」を歌ってる。ふ〜ん、駅でのコンサートだからかな?

 
リハーサル中、中央がY.I.A.O

 

友達の携帯電話が鳴った。「YOKO!」と渡される。よしさんからだ!電波状態が悪くてすぐに切れてしまう。よしさんは、この日日本から台湾入りしてその足でこの山奥水里まで来ることになっていた。台湾に来る前に打ち合わせして「じゃあ、水里で会いましょう」と話していたのだけど、実際水里のどこでコンサートがあるのかわたしも彼女も正確には知らなかった。(わたしは、友達に連れていってもらえると思って、のんびりしてた)線路は不通になってるし、本当に来れるのかなと心配していたのだ。でも、こっちの電話番号は分ってるからいざというときは連絡くれれば何とかなるだろう、と気楽に考えてたら、山で携帯がうまく働いてくれない。やきもき。

 

よしさんは、「汽車が止まってるらしいの〜。コンサートはどこであるか知らないって言われる〜」という。「わたしの方は会場に来てます。コンサートは中止じゃないから、とにかく来てください・・・」「.....」(電波が途切れる)

 

おりしもリハ中だったので、がんがんの大音量、只でさえ電話の声は聞き取り難い。ステージの裏の方へいって、よしさんからの電話を待つこと10分ほど。でもそれきり電話は鳴らず(圏外になったりを繰り返してた)ステージでは駅長さんとか県長さんとかの挨拶が始まった模様。電話はあきらめて席?に戻ると、ちょうどタイミングよく陳昇登場でコンサートが始まった。

 

1曲目は「然而」から、「風筝」、「OPIUMROSE」・・・・やっぱりいいなあ。ライブはいい。

ステージに対して垂直に走ってるレールに腰掛けてるので、体勢的にはちょっときついけど。聞かせる曲が続いて、なんだか泣きたい気持ちになってくる。

4曲目の「恨情歌」では、イントロがはじまっても歌おうとしない。途中で(演奏を)「止め止め」と言うような身振り。楽器のチューニングがあってないようだ。「さっき大雨が降った関係で、楽器の音が狂ったから」などと説明している。こんな時の陳昇はにこりともしないので、一寸こわい感じがする。もう随分なれたけど・・・。

 

今日のバンドには小傑の姿が無い。ギターは別の人が弾いていた。

中央の椅子席(いわゆる来賓席)に座ってるのは、年配のおじさんおばさんばかり。地元の議員さんとかそういう人たちなのか?陳昇の歌はあんまりよく知らないようだ。一緒にノッてコンサートを見ているおじさんもいたけど・・・。地面に座ってる私たちは、どの曲も一緒になって歌ってる。ちょっと対照的。

 

コンサート中盤の新寶島康楽隊コーナー、阿VONが出て来て「心情車站」を歌う。このもとの歌はリッチーレンが歌ってるもので、去年の跨年コンサートで本人がゲストに出たときに歌ってるのを初めて聞いた。なんとなく替え歌になってる気がするけど、よく分らない。この曲は陳昇は歌詞を書いた紙を持って歌っていた。

 

曲の合間、やっぱり紙切れを持っていたら、客席からブーイングが(カンペを見るなんてずるいと言う声)・・・すると、陳昇はその紙を客席に向けて「これはカンペじゃない。曲目リストだよ」なんて言ってた。でも、いつも歌詞を忘れるのは事実だよね。

 

誰かがビールを持ち込んできた。わ!野外コンサートの醍醐味だね。本数が無いので隣の子と半分こしてのむ。う〜んいい感じ。ステージの陳昇とも乾杯したいということか、ある女の子がステージまで走って台上の陳昇に渡していた。勇気ある〜って思ったけど、陳昇のコンサートでは普通のことなのかも。渡されたビールをバンドのメンバーにもまわして飲む陳昇。

 

「Y.I.A.O」が出てきた。申し訳ないけど私はここで、トイレタイム。トイレに行くとすでに長い列が・・・。みんな考えることは同じなのね。そのあと、もしかしてよしさんが来てるかも、と思って場内をぐるりと一周してみる。でも人が多くてやっぱり見つからない。まだたどり着いていないのかな?さっきの電話はどこからだったのだろう?

ステージでは、陳昇がまた出て来て「Y.I.A.O」といっしょに「責任」を歌ってる。「把悲傷留給自己」では、ステージを降りて客席に人をかき分け入ってきた。歌いながら観客の間を歩いて、会場後方のTVカメラ(?)の設置されてるやぐらの上へ。陳昇のコンサートではおなじみの展開だ。客席から花が渡される。多分昼間、駅でやってた「情人節」のイベントでもらった花なんじゃないかな?(同じ花を持っている人を何人も見たから)陳昇は、その花をお尻のポケットに差して歌ってる、なんか可愛い。

 

 やぐらのとこで歌う陳昇

 

客席で何曲か歌った後、ステージに戻るときには、わたしたちが座ってる目の前を通っていった。私の真ん前を通っていったので、道をあけようと体をずらすと、陳昇は茶目っ気たっぷりに私の頭と隣にいた友人の頭をなぜていった。一瞬ぽかんとしてしまったけど、隣にいた友達が「YOKOが来てるの気付いてくれたね」とか言われて、すっかり嬉しくなってしまった。

 

来賓席に座ってた一人のおじさん(陳昇の歌が好きらしい)が「なぜ、陳昇は君のことマークしたの?」と不思議そうに聴いてきた。友達なのかと思ったのだろうか?(とんでもない話ですが・・・)「この人は日本から来たファンだから」と友人が私に代わって説明してくれる。するとおじさんは、とてもびっくりしたらしく、英語で「ARE YOU SURE? JAPANESE?」って聴いてきた。思わず「「YES」。陳昇の人気は日本まで轟いているんだぞ〜とアピールできたかな?

 
レールに腰かけて見る観客たち

コンサートも後半戦となり、椅子席の来賓の方々は帰るようだ。私の前にいたおじさんは残っていたけど。

 

私のまわりのみんなが口口に「ありがとう、県長さん」と叫んでる。そうか、このコンサートは無料だ。県長さんのおかげなんだね。いい感じだなぁ。ステージからも陳昇達が挨拶していた。

 

来賓が帰ると、それまでは、皆おとなしく地面やレールに座って見ていたのだけど、ステージ前までつめかけてよいことになった。私もリュックを背負ってステージ前に走る。そこからはわずか2〜3メートルの近距離で見ることができて大盛り上がり。

 

それからまたびっくりすることが!

「新寶島康楽隊」の曲「船長要抓狂」「鼓聲若響」「台北附近」(替え歌部分は「秘密花園」になってた)などのなか、「黄昏的故郷」を演奏していたとき、台上から陳昇がいきなり「YOKO!」と叫んで私を指差した。

「え?今呼ばれた?え?私の名前だった?」。頭の中で、今聞こえた声と、「陳昇が私の名前を呼んだ」と言うことがつながるまでいろいろ考えた(ようなきがするが、時間にしてみると0.1秒間くらいか?)

次の瞬間には、阿VONが驚いた顔をしていたのを確認して(阿VONは私に気がついていなかっただろう)

ステージに向かって、おもいっきり手を振ってる私がいた。

まわりの友達が興奮して「きゃーYOKOよかったねえ!嬉しいでしょー」といってくれて、やっぱり嬉しい。陳昇もファンの心のつかみ方心得てるな。にくいねぇ〜(なんて、これは今だから、言えること。その時は、何がなんだか、ただ興奮しました)

 

何曲も歌った後、アンコールまえにMCタイム(でもよく聞き取れない(T_T)。

ステージから客席に向かって何かと話し掛ける陳昇と、ステージに向かって叫ぶ観客とのかけあい。「どこから来たのか」と陳昇が尋ねると「台北〜」とか「南投(地元)〜」とか、あちこちから声が上がる。特に大きな声で叫んでいた男の子に向かって彼はかなり端の方に立っていた。「當兵は終わったのか?」とかいろいろ会話をしている。楽しそう。陳昇はこうやって、客席のファンとのコミュニケーションを楽しんでいるようだ。彼の場合にはファンサービスって言葉はそぐわない。一緒に楽しんでるって感じ。

 

隣にいた友人が「あ、今YOKOのことを話してるよ。」というので、いっしょうけんめい聴き取ろうとしたけど、無駄な抵抗。全く聞き取れず「うわ〜ん・・わかんないよ〜」と思っていたら、また来ました。びっくりが。

台上の陳昇が「みんな黙って、これからYOKOと英語で話をするんだから・・・」・・・。

YOKOって誰?ここに来てるの?みたいな感じで一瞬ざわざわっとする客席。

「YOKO....」

「YES?」

「●×▲▽♪♂♯◇@◎●▼」

「???」

「@♂●×♪♯◇◎▲▽●▼♂×▲▽♪」

「????」

..............内緒にしてる訳じゃないんです、聞き取れなかったのです。ああっあたしのばか!まぬけ!とほほほほ〜....

 

 

それから話しは音楽に。陳昇が客席に「リクエストをしてもいい」というと、あちこちから思い思いの曲名をみんなが叫んでいて面白かった、一番声が多かったのは「SUMMER」。夏ですものね。それで歌った歌はやっぱりSUMMERでした。

 

SUMMERが最後の曲だったらしく、バンドのみんなもいなくなったが、お客はいつまでもアンコールを叫んでいる。もちろん私も、気持ちはもう十分堪能したし、疲れてるだろうから、これ以上のアンコールはなくてもいいかなと思ってましたが。

随分待って、「Y.I.A.O」とコーラスの女の子が出てきた。コーラスの女の子がマイクを取って、「昇哥はとっても疲れてて、歌えないから、みんなで一緒に歌うのでもいい?」と「擁擠的楽園」を歌い始めた。あわせて歌い始める観客。もちろん私も。怪しい中国語で歌いましたよ〜。アカペラの歌声が山に吸い込まれていくようでとても気持ちがよかった。こんな風に終わるコンサートもいいな、と思っていたら、でも、そこに、やっぱり、出て来てくれました。陳昇。やっぱりいいひとなんだな。

話の通り、相当お疲れのようでしたけど。もうもう、大満足!。

 

 

 

コンサートもすべて終わった。ステージ前に呆然と立っていたら、よしさんさんが「YOKOさ〜ん」と、駆け寄ってきた。「やっぱり着いてたんですね!よかった〜!!!一体いつ頃着いたんですか?」聞けば、しっかり開演前に到着していたんだそうだ。よかった。途中まで来て、その後タクシーに乗ってここまで来たのだそう。空港から直接来たと言う言葉通り、スーツケースをひいている。ほんとにご苦労様でした。でもホント会えてよかった。でも、一人でこんな交通不便な山の中まで来るって、よしさんってすごい人だなあ。私にはちょっとできないと思う。尊敬・・・・・・・・・!

 

ほっとして、まわりを見回せば、みんな帰る前にごみ拾いをしている。なんていい人たちなんだ!コンサートでも幸せになったけど、これにも感激。勿論私もしっかりゴミ掃除しました。地面がぬれてたから、新聞紙やダンボールなどいろいろ散らばってたけど、大勢で拾ったらあっという間にきれいになった。

感動に包まれていたので、ステージで機材を片づけているバンドの人たちにも、走っていってお礼とお疲れ様を言った。何だかんだで会場を出るのは私たちが一番遅かったみたい。あんなに沢山停まってた駐車場には私たちの車数台しか残っていなかった。

 

 

「If you die for the music,I will go to sing anywhere..」

(その時は聞き取れなかったけど、陳昇が話してくれた英語。後で、英語に堪能な友達に教えてもらった)

 

後記:このコンサートがあったのは1999年8月14日、それから1ヶ月ちょっとして、正にそこを震源に「集集大地震」が起きました。あの穏やかだった山あいの駅も、緑のトンネルと呼ばれる道もきっと姿を変えてしまっただろうと思います。それから、あの夜に一緒に歌った南投県の人たちの多くが被害にあわれたのでしょう。天災はどうしようもないものだけれど、彼らの苦しみが少しでも早くなくなるように祈ります。

 

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